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キャンプその1
12月某日キャンプに行こう。友人が言い出したのは11月終わりのこと。参加に至った人数は総勢14人。13人のオージーと1人の日本人。構成は10人男に4人女と犬3匹、みんな独身で私が住んでいる地域の若者ばかり。本当のオージーのキャンプを見せてやる、と言われわくわくしてその日を待った。
当日は雲の無い晴天の日。14人と3匹はそれぞれ5台からなる4WD自家用車に乗る。荷物はクーラーボックス、寝袋(スワッグ)、キャンプ用チェア、ガソリンタンク、水タンクなどなど。2泊3日のキャンプなのでもちろん食料がクーラーボックスに入っているのだが、ボックスを占める割合は2割程度で、それ以外はなんとビールである。各人飲み物はBYOなのだが、この時持ち込まれたビールは合計20カートン以上あったであろう。ちなみに480缶である。車は朝9時に出発、まず最初の休憩地点であるモスマンの給油所でストップ。各々ジュースや軽食をGET。モスマンをでて約30分、デントゥリー川に到着。観光客を乗せたバスや4WDの車はフェリー乗り場に行き、そこでワニ等が見られるクルーズに参加したりするのだが、私たち一行は(以後クレイジーズと呼ぼう)デントゥリー川を右手に上流へ向かう。約30分、馬や牛が闊歩するダートの道を進んだところで、デントゥリー川が大きく開き、車で渡れるポイントに出た。水深は深いところで50pというところか、川幅は20mほど。先頭に行くのは最年長のジョージ。愛車はランドクルーズである。私の見たところ、5台の中で一番コンデションのいい車。隣に彼女のダイが乗っている。私も会うのは今回で2回目の2人だが、年齢は・・・・40歳といったところか、でもジョージの髪型は金髪のロン毛ドレット風なのだ。二台目は私の乗った車で、友人のジャロッドが運転する車は“RANGE ROVER”。なぜが車の後ろのブランドネームは“HANG OVER”になっている楽しい車。なんなく川を渡る。これがクレイジーズのキャンプのスタートになった。
キャンプその2
無事5台の車が最初の川を渡った所からみんなも興奮し始めた。そして各々の手には早くもビールの缶。そこからはCREBトラックと呼ばれる、4WDのみ通行が許される道、というか4WDしか行けない道。4WD用の地図にしかその道は載っていない、それはそれはアップダウン激しい道なのです。道幅はもちろん車一台分。壁のような道をジャロッドは1速に落としたりしながら運転。車はヴーヴーという音とともに登る。心配なのはリアに詰まれた半端じゃない荷物(ビール)の重さでした。坂道がキツ過ぎて途中で止まってしまい、後進した時は心臓が止まる思いでしたが、別の車に乗車している友人の助言があったりして旅は続きます。長い登りが続いた後は長い下りがあり、一番ボトムに川があるといった道を繰り返して進んでいきます。
途中ですご〜い急な下り坂に差し掛かりました。傾斜は45度ぐらいで高低差は30m程、その間に3段ほど平坦な踊り場ができています。みんな慎重にスピートを落として降りる中、一番最後の赤い日産パトロールを運転するヘイミッシュはややスピードを出し、下で見ている者は平坦な踊り場を通過した後に車の後ろがポンッと跳ね上げられるのを見て歓声(絶叫?)をあげました。景色はとてもきれいで空はまっ青、見渡す限り緑の世界です。ビールがうまい!30分走れば車から降りて休憩、きれいな川があればひと泳ぎ、といったペースで進む中、車の窓はすでに埃で覆われていて、誰かの落書きが…。コースの荒さ、激しさに慣れてきた頃、事件は起こりました。
キャンプその3
HANG OVER、いやジャロッドのレンジローバーが登り坂でエンジンストップ。エンジンを点検したりするのですが、ウンともスンともいいません。私は、同乗していた車だけにヒヤヒヤしていました。男衆は協力して直そうと試みます、がどうも動かない。そんな中、タートルというあだ名の陽気なオージーが言いました。「これがオーストラリアンコメディだよ」意味はあんまり理解できなかったけど、車が一台ポシャッたところでどうしようもない、って感じで笑っていました。そこにいる誰もがイライラする事無く、待つ者は待ち、飲む者は飲み、修理する者は修理し、犬と遊ぶ者は犬と遊んでいました。炎天下の中、不思議な雰囲気の空間でした。「これはホリデーなんだ、イライラすることはない」誰かが言った。
1時間ぐらいそこにいたでしょうか、誰かがその車を放置して前進することを提案しだした頃、ダメ元でトーイングしてみようと言ったのはクレイジーズまとめ役のスティーブ。トーイング(牽引)するには最悪の急な上り坂。私はそんな事には気づかずに、「へぇ、ちゃんと牽引用のロープを車に積んでるんだ」と感心していました。大きな声をかけ合って、「そのまま!まっすぐ!」「ゆっくり!止まるな!ちょっと右!」トーイングロープがビーンと張ったら、ゆっくり車は動き始めました。ジャロッドは運転席でエンジンをスタートさせようとセルを回します。1回、2回、3回、かからない。車はゆっくり登り坂を引っ張られて登っていきます。てっぺんまで行ったらそこからは平坦な道があり、そこでようやくエンジンがかかりました。「イエー!!!」「ゴクゴクゴク!」(ビール)
すごく悪いんだけれども、その後ジャロッドの車には乗りたくなかったので、私は坂の途中からベンの運転するダイハツ車に乗りました。それまでベンの車に同乗していたダレンがジャロッドの車に乗り込み、ようやく前進。この後1時間ほど走り、目的のキャンプの場所への曲がり角に到着。時間は昼の3時を過ぎていました。
キャンプその4
CREBの赤土のダート道には標識も無ければ看板もない。知る人ぞ知るスポットへの入り口。とあるポイントでそれまでの道から右折し、こんどは岩がごろごろする道へ入っていきました。ベンの運転するダイハツ・フェローザは軽量の4WD車。それまで楽々に今までの道をこなしてきたこの車が一番の難関に差し掛かりました。車高が他の車より低いので底を岩で擦ってしまうし、過去に通った車がすり減らした為に、道にはかなりの高低差がありました。いわゆる、階段状態になってしまっているのです。またもや男衆がかけより、道の岩をどけたり、凹みに石や木を置いて埋めたり。2キロほどの道のりにまた1時間かかりました。そんな苦労の末、(というかみんな楽しんでいる)着いた場所は、美しい川のほとり。大きめの平たい岩が何枚も重なり、上流には滝も見え、足元はなぜかさらさらの砂。ここで2泊します。各々荷物を運び出し、セットし、テントを張ったり、スワッグを準備したり。そして準備の終わったものから泳ぎはじめました。水はきれいで美しく、本当に静かな場所です。もちろんクレイジーズ以外に人は居らず、そしてそこには決められたルールはありません。クレイジーズのみんなは、いつも行く地元のパブで会う連中です。特別仲がいい訳ではないですが、なんとなく気の合う仲間。ルールなしでも、誰かが夕食の準備をし、誰かが焚き火の木を拾い、誰かがローソクを配置し、と誰かが自発的に物事をする、ほんとに不思議な空気が流れていました。ま、決まってやるのは女衆より男衆。日本の鍋将軍ならぬ、キャンプ将軍が先立って用意をしてくれました。犬は喜んで駆け回り、人間達は自分達だけのヘブンにいる気分で飲みました。ある者は泳ぎ、ある者は本を読み、思い思いに時間を過ごす。夜は焚き火を囲んではトーク、トーク。タートルの犬のチャイナが吠えはじめ、何だ?振り返った時にはチャイナは野生のバンディークートを捕獲。(チャイナ、タートルに怒られる。)星は満点に輝き、夜12時を過ぎた頃、満月から2日目の真っ赤な月がゆっくり見えてきました。蚊がほとんどいなくて本当にラッキー。
キャンプその5
私にとってキャンプはたいてい1泊2日。だけどこの日は移動しないで同じ場所にまた丸1日いられるのが幸せでたまらなかった。2日目の朝、6時半。太陽は、お出ましとともに気温が上昇、みんなの目覚まし替わりです。もう暑くて寝ていられない。速攻私は川に飛び込んで「気持ちいい〜。」また誰かが朝食を用意してくれていました。8時、朝食を終えたクレイジーズ、6人の男共が車での薪拾いに出かけました。2時間ほどして彼らは帰ってきました。今となってこの日に何をしたか、覚えてないほど、何もしていません。本を読んで、泳いで、飲んで、しゃべって。でも退屈を感じない一日でした。日中は日陰がそこにはありません。またもや誰かが、工事現場でよく見かける青のカバーで日陰をつくり始めました。テントは水中に張られ、丁度人がお風呂に入るような感じになりました。炎天下の中、日陰で腰まで水に使ってビールを飲む。最初は驚いたビールの数も半分以上減っていて、またびっくり。そして黒のゴミ袋2つがおよそビールの缶だけでいっぱい。なんでこいつらそんなに飲める?と疑問、しかし私も既にトータル20本ほど空けていた。
キャンプその6
3日目、朝食を済ませたクレイジーズ、荷物のパッキングを始め、10時30分頃には出発の準備が整いました。ゴミ袋は計3つ。缶の山です。この日さすがに半数以上の人がビールを飲まなくなりました。でも飲み物は水かビールしか無いので・・・しかたなく(?)ビール・・・・・。帰りはベンの車も行きに比べ楽に難所を通過。何度か底をこすったけど・・・。約10分行った所で停車。そこから10分歩いたところにミラミラ滝も負けるすんごい滝が存在しました。高低さは60mもあるような滝、岩の表面は削られつるつるです。幅は50mほどでしょうか、立っているのもちょっと怖い大きな岩の上からそれを見降ろし、なんと壮大な滝なんだ・・・・実際は言葉も出ないくらい素晴らしい場所でした。フイルムが無かったので写真に収めることができなかったのが残念。スティーブと若手一番21歳のスチューイがまたここにキャンプに来る計画をしよう、と約束してくれました。
CREBトラックに出て、右折。おととい来た道を引き返さず、前進。それからの道は幅も広く、相変わらず赤土ダート道だけど、スピードを出して走れる道でした。でもなぜか時折道端に牛や馬がいるのです。そこは多分誰かの土地なんでしょう、時折ゲートがあり、「通ったら閉めてください」と書かれていました。オーストラリアはデカイ!
そこからしばらく行ったところに村がありました。Wujal Wujal(ウジュウジュ)という名前の村はアボリジニのコミュニティでした。どうやらその日、村のはずれの広場ではお葬式が行われているらしく、正装をしたアボリジニの人たちが集まっていました。結構立派な家に住み、各家庭には古いけども車がありました。初めて見るアボリジニの村。なんでこんな辺鄙なところに住んでいるのだろう。彼らが好んでコミュニティを作っているのか、それとも街では住みにくいのか、この国の政府がやっていることなのか、私にはわかりません・・・。
キャンプその7
さらに道は続き、時々海が見えるようになり、それから1時間ほど走ったところで、ようやくヨーロッパ系のバックパッカーが歩いているのを見かけました。間もなく道が舗装道路に変わり、看板には“ケープトリビュレーション国立公園”の文字。PKのジャングルビレッジ(宿とレストラン)で休憩することになり、やっと2日ぶりのちゃんとしたトイレに行くことができました(笑)。ビール飲む人はまたここでもビールを飲んでいました。だって買い込んだビールはみんな飲んじゃったから。さあ、ここからは舗装道路、みんなそろそろ疲れが出てきているのでちょうど良かったと思う。やっぱりダートは危ない。まず埃が激しいので間隔を空けないと前が見えないし、スリップするし。
さて、ここからは自由に帰って、勝手に解散。ジャロッドの車は1日目以降調子よく、トラブルなく家に帰れました。また14人という人数がちょうど心地よかったな、多すぎず少な過ぎず。キャンプの後の心地よい疲れ、でも肌が焼けて痛い・・・。またいつかバプに行った時にみんなに会えばこの話で盛り上がる。それがまた楽しみだな、ビール飲みながら・・・・。 
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